もくじ
胡粉とは?
胡粉とは、日本画においてなくてはならない非常に大切な要素の一つで、
伝統的な白色の絵の具です。
貝殻からできており主な種類は
・イタボ牡蠣(イタボガキ)
・ホタテ
・ハマグリ
この3つとなっています。
胡粉メーカーによって使う貝の種類は違っていて
それぞれ色味、質感なども同じ胡粉と言われるものでも少しずつ異なります。
また、非常に美しい白色を表現できる胡粉ですが、
使用する際には手間と時間がかかり、長期間の保存には向いていません。
このように使用する際に労力のかかるものだった胡粉ですが、
水彩日本画絵具としてチューブタイプが登場しました。
今回は、チューブタイプの胡粉についてお伝えしていきます。
胡粉を自作する方法はこちら
【日本画】胡粉とは何か?どうやって使うの?作り方を手順をわかりやすく解説します!
チューブ胡粉とは?
チューブ胡粉とは、伝統的白色の胡粉をより簡単に使用できる
練った状態の胡粉をアクリル絵の具のようにチューブに詰めて販売されているものです。
現在は日本画画材メーカーの吉祥から販売されていて画材店で簡単に購入が可能です。
胡粉の白色だけでなく、その他さまざまな日本画のチューブ絵の具も取り揃えており
初心者にとっても、少量だけ使いたい色がある方にも使いやすくなっています。
チューブ胡粉の使いかた
チューブ胡粉を使う際は一般的な胡粉とは違って
アクリル絵の具などの要領と同じ使い方ができます。
チューブ胡粉を必要な分絵皿に出し、水でといて使います。
もしより密着力を上げたければ膠を足して調節して使うのもおすすめです。
膠を入れる際は少しずつ加えて好みの濃度にすると
失敗が少なくおすすめです。
チューブ胡粉の特徴
チューブ胡粉の特徴を見ていきます。
チューブ胡粉の大きな特徴は使い方の部分です。
一般的な胡粉のような手間がいらず、
アクリル絵の具や水彩絵の具のように使用できるところが特徴であり魅力です。
現在は吉祥から販売されていて、単体で購入する場合は
サイズが10号(50ml)と6号(20ml)の2種類があります。
左:10号(50ml) 右:6号(20ml)
自作の胡粉とチューブ胡粉の比較
自作の胡粉の材料と作り方(別記事で解説)
自作の胡粉とチューブ胡粉の違い
今回は上羽絵惣 白狐印 水飛胡粉 <飛切> ウエバエソウ ビャッコジルシ ミズトビゴフン トビキリ
こちらを使って自作した胡粉と吉祥のチューブ胡粉を比較していきます。
発色の違い
乾く前と乾いた後で比較していきます
まずは乾く前
塗り方は2種類とも違いが出ないように
上のほうはベタっと濃いめに力を強めに塗っていて、
下のほうは力を抜いてさっと塗っています。
比べてみるとチューブ胡粉のほうが発色が濃く見えます。
また、チューブ胡粉の色の乗り方が均一で紙にきちんと染み込んでいるように見えます。
一方で自作胡粉のほうは水っぽく薄めの印象で、
塗りムラのようなものが気になります。
紙にきちんと染み込んでいるというよりも
紙に水をかけた時に広がってしまうような感じと似ています。
塗りたての時はチューブ胡粉が濃く発色し、
自作胡粉は塗りムラが気になりました。
照明の具合で色味が変わらないように全て同じ部屋、同じくらいの位置で撮影しています。
隠蔽力
黒色の画用紙に塗って下地がどれくらい透けるかをみていきます。
次は乾いた状態で比較していきます。
乾いた状態でどうなるかが制作する上ではかなり大切になってきます。
完全に乾いた状態
塗りたての時とは違ってチューブ胡粉のほうが薄づきな印象を感じます。
下地の黒色を隠蔽する力は少し弱く、
濃くべたっと塗っている部分でも若干の透け感があるように見えます。
均等に色が載っている感じはそのままに、
チューブ胡粉は乾くと薄めの発色でした。
自作胡粉の方が白の発色が強く、下地の黒色を隠蔽する力が強いです。
塗りたての時に少し気になっていた塗りムラのような感じも
完全に乾くと目立たなくなりました。
完全に乾いた状態では、チューブ胡粉は薄めの発色で、
自作胡粉の方が強い発色で下地の色の隠蔽力もありました。
保存期間
使用できる状態で保存できる期間がどのくらいか比較します
チューブ胡粉の場合
チューブ胡粉をチューブから絵の具皿に出してからも
発色や使用感が変わらない期間がどのくらいなのかみてみました。
絵皿の上に出して、一日机で放置して乾燥させてみます。
一度絵皿の上で完全に乾いた胡粉は特にひび割れせず
そのまま固まっていました。水を入れればある程度は復活しました。
チューブから出したての時のような粘度はあまり感じられないので、
全体を白く塗ったり広い面積、メインの白色絵の具として使うことは難しいかもしれません。
狭い面積を少し塗るくらいなら問題ありませんでした。
さらに一週間放置した場合にはひび割れが若干起こり固まりましたが
特に使用感に大きな変化は見られませんでした。
ですが一週間そのまま放置していたので、
ほこりなどのごみが絵皿に入っていました。
一度水を入れて捨て、すすいでゴミを取り除いてから使いました。
もし使いきれずに保管したい場合は
ラップやシリコンなどの蓋をしましょう。
また、使用後の作品の品質が保証されるわけではないので、あくまで目安として考えてください。
理想は出してすぐに使い切ることです。
自作胡粉の場合
自作胡粉を溶かしてそのまま乾かして1日放置したところ、
かなりパキパキにひび割れが起こっていました。
試しに水を入れてみたところふやけましたが溶けきらないところがあり
少し使いづらくなっていました。
においも良いものではないので、何度も使うのはおすすめしません。
自作胡粉を次の日ももう一度使いたい場合は、
ラップなどで乾燥を防ぎ、冷蔵庫で保管すれば2日程は持ちます。
劣化が始まると混ぜたもの同士の分離や、
よりキツく強い刺激臭などに変化してしまう可能性があるので
やはり作ったその日、もしくは次の日に使い切れると良いですね。
どちらのものも
内容量の違い
販売されている量を比較します
⚫︎吉祥チューブ胡粉
内容量:10号(50ml)と6号(20ml)
⚫︎上羽絵惣 白狐印 水飛胡粉 <飛切> ウエバエソウ ビャッコジルシ ミズトビゴフン トビキリ
内容量:小(150g) 中(300g) 大(500g)
比べてみるとすでに使えるようにできている
チューブ胡粉のほうが少なめの容量で販売されています。
まとめ
ここまで、チューブ胡粉の使い方と特徴を見てきました。
本来とても手間がかかる胡粉を簡単に体験できるのでとても便利な商品です。
チューブ胡粉と手間をかけた自作胡粉との比較では以下のような結果になりました。
チューブ胡粉 | 自作胡粉 | |
発色や色の乗り具合 | 少し薄めで均一 | 濃いめで発色が良い、
ムラが出る場合がある |
販売の内容量 | 少なめなパッケージなので
高級な印象 |
幅があるので
自分の使う量に合わせられる |
手軽さ | 出してすぐ使えるのはかなり便利 | 使うまでに時間と手間がかかる |
比べてみると使用感では発色と使うまでの時間、容量の部分にも差が出ました。
どちらが良い悪いではなく、用途別に使い分けられると良いですね。
チューブ胡粉は、狭い範囲で限定的に仕上げに使ったりできますし
ほとんど完成している状態での少しの手直しなどに便利です。
自作胡粉は広範囲の塗りにも最適ですし
貝の種類によっても赤みがかった白や青みの強い白など異なるため
好みのメーカーのものを模索したり、
はっきりとした発色で作品の精度を上げたり
より胡粉の作り方が上手くなったりと手間がかかるなりに用途や良い部分はたくさんあります。
こんなふうに好みや用途、したい表現に合わせて変えていくものなので
それぞれのシーンで使い分けして自作の胡粉にプラスして
チューブ胡粉も選択肢に入れるとさらに表現の幅が広がりそうです。
今回比較に使用した胡粉は、
上羽絵惣 白狐印 水飛胡粉 <飛切> ウエバエソウ ビャッコジルシ ミズトビゴフン トビキリ
ホタテから作られているこちらを使用しました。
気になる方はぜひ見てみてください。
胡粉を自作する方法はこちら
【日本画】胡粉とは何か?どうやって使うの?作り方を手順をわかりやすく解説します!
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