もくじ
甲斐庄 楠音(かいのしょう ただおと)とは
どんな画家?
こんにちは、日本画家の酢田こいちです。
今回は
甲斐荘 楠音(かいのしょう ただおと)という
大正時代から昭和にかけて生きた
男性日本画家についてお伝えしていきます。
彼は特に女性を描いた作品が多く、
正統派美人も、怪しい美人も幅広く描いた
美人画で有名な画家です。
2021年には、東京国立近代美術館で行われた企画展
「あやしい絵展」にて
甲斐庄楠音の作品「横櫛」がメインビジュアルとして使用されました。
また、SNSでは「幻覚(踊る女)」等が話題になりました。
2023年には、東京駅構内にある
東京ステーションギャラリー(美術館)で
「甲斐荘楠音の全貌」という
甲斐荘楠音の生涯で制作してきたものを見ることができる展示を行っていました。
画家としてだけでなく
時代劇の衣装デザインにも多くかかわった甲斐荘楠音は
非常に多彩だったと言えます。
私のとても好きな画家の一人です。
そんな甲斐荘楠音について、ぜひ知っていってください。
個人的には、女性に対して性的な魅力というよりも、
描かれている人自身の
その人が発する特別な魅力を描き残しているような
そんな作品が多い印象のある画家です。
甲斐庄楠音とは?人物と生涯
甲斐庄楠音は生涯独身で
同性愛者(当時は男色と呼ばれていました。)と言われており、
女装趣味もありました。作品の資料としても、
甲斐荘楠音本人の女形の格好をした写真が残っています。
現代でも100%受け入れられているとは言いづらい彼の趣味は
当時にしたらかなり尖っていたのではないでしょうか。
明治27年(1894年)京都の
江戸時代に裕福な武士の家系に生まれました。
京都府立第一中学に入学したのち、京都市立美術工芸学校に転校します。
そこで竹内来栖から教わるものの甲斐荘は留年します。
その後専門学校へ進みます。
大正4年(1915年)には前衛的日本画研究集団に関わります。
大正7年(1918年)には「横櫛」を発表しました。(この作品は、2021年の「あやしい絵展」にてメインビジュアルを飾っています。)
大正11年(1922年)「青衣の女」を発表、展覧会に出品します。
大正15年(1926年)「女と風船(のちに「蝶々」に改題)」
これを展覧会に出品し用としたところ拒否され、
『穢い(きたない)絵事件』と呼ばれています。
また、この後映画界に転身します。
甲斐庄楠音が関わったもの-日本画から衣装デザイン-
映画界への転身をした甲斐庄楠音は
時代劇映画への関わりは、時代風俗考証家としてでした。
「雨月物語」(うげつものがたり) 著:上田秋成
これを溝口健二(監督)が映画化する際に
甲斐庄楠音が時代風俗考証家として関わりました。
この映画は非常に高い評価を受け
ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞を受賞し、
甲斐庄楠音はアカデミー賞デザイン賞を受賞しました。
有名な作品
タイトルをクリックすると画像を見ることができます
(※画像に権利があるためこちらに直接載せられません)
あやしい絵展でも展示された妖狐のような作品です。
たしかにあやしいですが、そのあやしさも相まって目を惹く作品です。
甲斐庄楠音自身が女装し
太夫(たゆう)※の格好をしている写真もある作品です。
力強く存在感があり、暗闇から浮き出るような白塗りの肌が印象的です。
非常に大きな作品で、空間を支配する圧倒的な存在感があります。
全体を見ても、きらびやかで美しいですが、
細かく見ていくとさらに圧倒される細部の描写や
女性ごとに違う色柄の着物は、映画界でも高く評価され
業界を越境した甲斐庄楠音らしさを感じられるのではないでしょうか。
※太夫(たゆう)とは、花街の遊女の中で、
ひときわに容姿、教養、舞踊などが優れている最高の位にいる遊女のこと。
甲斐庄楠音が後世に与えた影響
甲斐庄楠音は、当時にはなかった
新しいタイプの日本画の作風を生み出しました。
退廃的とも言えるその表現は、
正統派な美人画とはほとんど反対と言っても良いような作風ではないでしょうか。
この独特で惹きつけられてしまう作風は、現代の日本画家だけでなく
さまざまなジャンルの美術に関わる人々に好まれ
今でも展覧会が行われたりしていて、
展覧会が行われる際には必ず
SNSでも話題になったりするほどです。
甲斐庄楠音の作品-作品が収蔵されている美術館-
甲斐庄楠音の作品は
ほとんどの作品が京都国立近代美術館に収蔵されているようです。
その他は、京都市京セラ美術館、広島県立美術館等に収蔵されているようです。
甲斐庄楠音に関する企画展が開催されれば直接見ることができます。
作品は屏風絵などの比較的大きいものが多く
彼の作品の、空間を支配する力は圧巻です。
煌びやかさや、絢爛豪華に描かれた着物の細部も魅力の一つですが
おどろおどろしい、退廃的な雰囲気の作品は
個人的に群を抜いて異彩を放っていて美しく感じられました。
個人的には、
一度見ただけでは足りないので、何度でも見たい作家のひとりです。
もし見たことがない方は
機会があればぜひ本物を直接みていただきたいです。
何が印象に残るかは、人それぞれですから
作品を鑑賞した後は
感じたことをお土産として
心に持って帰ることができるのではないかなと思います。
まとめ
甲斐庄楠音は、現代、こと2021年から2024年付近では「ボーダレス」「越境」
と言われます。
①男性である甲斐庄楠音が女性の格好をしていた(女装)=性別の越境
②=日本画(絵画)から映画界への転身=ジャンルの越境
というふうに。
なぜ甲斐庄楠音は現代において
「ボーダレス」「越境」と言われているのでしょうか?
彼が当時では新しいタイプの優れた日本画家であり、
時代風俗考証家としても優秀で結果を残したからなのではないかと考えられます。
現代の価値観から見ても
甲斐庄楠音にクセの強さをかなり感じますし、
作品からも独特の色気や
特徴的な美しさの表現がありますよね。
明治生まれの
日本画家であり時代風俗考証家として生きた
甲斐庄楠音について、ここまでお伝えしてきました。
日本画を描く上でも、見る上でも、
好きな作品やお気に入りの画家を見つけると
楽しく豊かに生活できると思うのでおすすめです。
気に入った作品はぜひ参考にしたり、
できれば身近に飾ってみたりしてみてくださいね。
こちらは、私が壁に飾っているチラシです。
チラシは展覧会の目玉をしっかりと写してくれているので飾りやすいです。
それでは、良い日本画ライフを〜!
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